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「キャリア権」行使の前提となるもの

向井 洋平
IICパートナーズ 常務取締役
年金数理人
1級DCプランナー
2017年10月18日

最近いろんなところで「人生100年時代」というフレーズを見るようになりましたね。つい先日も、NHKの週刊ニュース深読みで「何歳まで現役? ”人生100年時代”の働き方」という特集が組まれていました。

定年前の”現役世代”と、定年後の”老後世代”の対立を軸として、企業における定年再雇用社員への対応が議論の主なテーマとなっていました。

その中で問題の1つとして挙がっていたのが、日本の人事システム。みんなが平社員からスタートし、人事異動を繰り返しながら管理職への昇進を目指していくわけですが、定年を迎える頃にはすっかり現場を離れてしまっているために、社員は自分に何ができるのか、会社は社員に何を任せればよいのかが分からない状況になっています。

そこで番組の中で提示されたのが「キャリア権」という考え方。調べてみると、キャリア権が初めて提唱されたのは1996年ということで、考え方としては20年以上前からあったようです。日本の人事部の「人事辞典」ではキャリア権について次のように説明されています。

人は誰でも自ら望む職業キャリアを主体的に開発・形成する権利をもち、企業や社会は個々人のキャリア形成を保障・支援すべきであるという法概念、およびそうした労働者の権利自体を、企業組織が有する人事権に対して「キャリア権」と呼びます。キャリア権の議論は、職業経験による能力の蓄積やキャリアを個人の財産として法的に位置づけようとする試みであり、今後の雇用政策や職業能力開発政策の展開を支える新しいコンセプトとして注目されています。
(「社員に信頼される退職金・企業年金のつくり方」2011/7/25掲載)

会社が行使する人事権と対になるものだと考えればイメージしやすいでしょうか。

確かにキャリア権が尊重されている企業であれば、社員は定年後も見据えて自分のキャリアを主体的に選択し、その結果として年齢に関係なく活躍できる場を見つけることができる…のかもしれません。ただこれには少なくとも2つの条件があるように思います。1つは、社員にキャリア権を行使する意思があること。今の新卒採用の仕組みを前提に考えると、入社してしばらくは主体的にキャリアを開発するというよりはまず仕事を覚えて経験を積むための期間であり、定年後を見据えたキャリアを考えるのは早くても40代以降になると思います。

しかしそれまで会社に与えられた仕事を一生懸命こなしてきたところで急にキャリア権と言われても、自分が何を望むのか、多くの場合すぐには答えられないでしょう。会社は社員の希望を尊重するという以前に、社員が自律的にキャリアを選択できるように教育するところから始める必要があるように思います。

もう1つはキャリア権の考え方が多くの企業に受け入れられること。社員の希望するキャリアが社内で見つけられるとは限りません。そうした時に、希望するキャリアを実現できる他の会社で受け入れてもらえなければ、キャリア権は絵に描いた餅になってしまうでしょう。

日本では、人に仕事をはりつけるメンバーシップ型の雇用が主流ですが、これではキャリア権を行使することができず、キャリアに対する自律性も育ちません。少なくとも一定年齢以上の社員に対しては、仕事に人をはりつけるジョブ型の雇用にシフトしていかないと、会社も社員も”人生100年時代”には対応できなくなっていくのではないでしょうか。

編集部より:この記事は、はたらく人たちの未来をデザインする退職給付の専門家「ライフ・デザイン・アクチュアリー」向井洋平のオフィシャルブログの記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「社員に信頼される退職金・企業年金のつくり方」をご覧ください。

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