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公的年金はもともと生活費のすべてを賄うようには作られていない

向井 洋平
IICパートナーズ 常務取締役
年金数理人
1級DCプランナー
2017年10月27日

年金に関するニュースやそれに対するコメントって誤解に基づく批判や悲観が目立つんですが、たまにこういうちゃんとした記事もあったりします。

残念ながら大きく取り上げられることは少ないですけどね…。

時に昭和36年、なぜ日本国民の誰もが国民年金の誕生を喜んだのか? MONEY VOICEより

上の記事には年金制度の考え方を理解する上で大事な点がいくつか含まれていますが、今回はそのうち”公的年金はもともと生活費のすべてを賄うようには作られていない”という点を取り上げたいと思います。

年金制度がスタートする時、当たり前ですが積立金はゼロです。この時点で年金を支給するには、現役世代が負担した保険料をそのまま年金支給に充てるほかありません。このやり方を賦課(ふか)方式といいます。

老後世代に対して現役世代の割合が高い状態が続くのであれば、比較的小さい負担で年金の支払いを賄うことができるので、純粋な賦課方式のままで問題ありません。しかし高齢化が進んでいくことが見込まれる中では、現役世代の負担がだんだん重くなっていくことが容易に想像できます。

実際には、今後さらに高齢化が進むことを見越して現在では年金支給総額の3年分程度の積立金が積み立てられています。ということは、この何十年間で現役世代は老後世代の年金を賄いつつも、次の世代の負担が重くなりすぎないように保険料の一部を積み立ててきた、いわば二重の負担をしてきたということです。

そうした状況の中で、年金額はいきなり全員に老後の生活費に見合った水準に設定されたわけではなく、現役世代が負担可能かつ将来的にも年金制度を維持できる範囲で徐々にその水準や対象者を拡大してきました。

そして1986年4月以降は学生を除く20歳以上60歳未満の全国民が強制加入となり、職業にかかわらず共通の基礎年金が支給される仕組みになりました(1991年4月以降は学生も強制加入に)。

基礎年金の額が過去最高だったのは1999年4月からの4年間の80.4万円で、現在(2017年度)の77.9万円よりも若干多い金額ですが、この20年間物価は上がっておらず、毎月の支出額も24万円前後でほとんど変わっていません(家計調査より、高齢夫婦無職世帯の消費支出額)。

高齢夫婦無職世帯の家計の収支は今も昔も赤字で、公的年金だけで老後の生活費をすべて賄えたことはいまだかつてないのです。

「年金だけでは生活できないから不安」
「年金だけでは生活できないから年金に入ってても無駄」
「年金だけでは生活できないから年金制度は破たんしている」
というのは全く的外れです。

年金だけで老後の生活費の7~8割を賄えるからこそ、残りの部分を自助努力でカバーできるわけです。

制度設計上は年金だけで生活費をすべて賄えるようにすることもできますが、そうすると現役世代の負担がますます重くなってしまいます。制度が複雑すぎる等の課題を抱えている年金制度ですが、全体としてはうまくバランスを取りながら運営されているといってよいでしょう。

日本の年金は危なそう、で思考停止するのではなく、どの水準まで年金でカバーできるのかをしっかり把握したうえで、残りの部分を備えていくことが大切です。

編集部より:この記事は、「社員に信頼される退職金・企業年金のつくり方」の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はをご覧ください。

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