page_top
人気記事ランキング

老後資金はいくら貯めればよいのか?

向井 洋平
IICパートナーズ 常務取締役
年金数理人
1級DCプランナー
2017年10月02日

インターネットで「老後資金」と検索すると、3000万円とか1000万円とかいろいろな数字が出てきますが、いったいどれを信用したらいいのでしょうか?

老後のお金に対して不安を感じる最大の理由は「いくら用意したらよいのか分からない」点にあります。大まかでもよいので自分に必要な額を把握しておくことによって、老後のお金に対する不安を解消し、充実したセカンドライフを送るための準備に前向きに取り組んでいくことができるでしょう。

老後の生活費を把握する

老後資金の必要額を把握するには、まず老後の生活費を把握しておく必要があります。総務省の家計調査(2016年)によると、年代別の1月あたりの支出額は次のようになっています。

項目別にみると、「教育」(2人以上の世帯の場合)、「交通・通信」については、60歳前後での減少額が大きくなっています。

但しこれらはあくまで平均です。自分に必要な額を把握するには、まず今の自分の生活費を把握しなければなりません。

そう聞くと家計簿をつけてないからダメだと思うかもしれませんが、月末時点の預金・貯蓄残高の増加分を1か月の手取り収入(給与)から差し引けば、支出の総額を把握することができます。これを3か月分くらい計算すれば、ひと月の生活費がいくらくらいかかっているのかはおおむね把握できるでしょう。

あとはそこから教育費などの老後には必要ないと考えられる支出を除いていけば、老後の生活費がどれくらいになるのかをイメージすることができます。大雑把に言えば、老後の生活費は現役時代(40~50歳代)の7~8割と考えておけばよいでしょう。

老後の収入を把握する

会社員にとって、老後の主要な収入は厚生年金です。50歳以上になると、年に1回誕生月に届く「ねんきん定期便」に将来の年金見込み額が書いてありますから、しっかり確認しておきましょう。50歳未満であっても、「ねんきんネット」に登録することで、将来の年金見込み額を簡単に試算することができます。

配偶者がいる場合は、その年金見込み額も合計したものが老後の収入となります。ただし年金にも税金や社会保険料はかかりますから、手取り収入としては15%程度差し引いて考えておくのがよいでしょう。

この手取り収入が、上記の老後の生活費に対して不足している額を、あらかじめ老後の生活資金として用意しておけばよいということになります。

家計調査(2016年)によると、高齢夫婦無職世帯の手取り収入は18.3万円、支出は23.8万円、差し引き5.5万円の不足となっています。老後の期間を65歳からの25年間とすれば、老後の生活資金として用意すべき額は5.5万円×12か月×25年=1,650万円となります。

70歳まで待てば生活費の不足はなくなる

上記のように、「1か月の収支の不足額×老後の期間」により必要資金を把握するというのが基本的な考え方になりますが、これには1つ問題があります。それは、長生きすればするほど老後の期間は長くなり、必要資金も大きくなってしまうということです。

しかしこれには有効な対策があります。年金を受け取るのを70歳まで待つということです。厚生年金・国民年金は65歳からの支給が基本ですが、受け取りの開始を遅らせる(繰下げ受給する)ことで、1年あたり8.4%、最大5年遅らせることで42%年金額は増加します。

夫婦の少なくとも一方が会社員で、夫婦ともに年金額が42%増加すれば、老後の生活費は概ねまかなうことができるでしょう。上記の高齢夫婦無職世帯の例で試算してみても、収入の増加額は不足額を上回ります(実際に繰下げ受給を選択している人は全体の2%に満たない)。

厚生年金・国民年金の受け取りを70歳からと想定しておくことで、予想以上に長生きした場合でも生活費を心配する必要がなくなります。老後資金として用意すべき金額は、リタイアしてから70歳になるまでの生活費と、それ以外の大きな支出(例えば海外旅行や車の購入、住宅のリフォーム、介護など)に備えた額の合計ということになります。

例えば、65歳にリタイアして月の生活費が25万円だとすると、70歳になるまでの生活費は25万円×12か月×5年=1500万円、それ以外の大きな支出に備えた額を1500万円とすると、合計で3000万円となります。

会社の退職金を把握する

仮に老後資金として用意すべき金額が3000万円あったとして、会社員の場合、必ずしもこの全額を自分で積み立てる必要ありません。多くの会社では退職金が支給されるからです。

厚生労働省の就労条件総合調査(2013年)によると、勤続35年以上の定年退職者に対する退職給付額は以下のとおりとなっています。

例えば、従業員規模300~999人の大学卒社員であれば、平均して2000万円近い退職金がありますから、(配偶者に退職金がないとしても)自分で積み立てるべき金額は残り約1000万円でよいことになります。

ただしこれもあくまで平均であり、退職金の金額は会社ごとに異なりますし、昇進の早さなどによっても差がつきます。自分の会社の退職金制度がどうなっているのか、定年を迎えた時にはいくらくらい支給されるのかを確認しておきましょう

ーまとめー

老後の生活資金については、会社員であれば年金の受け取りを70歳まで待つことにより、それ以降の生活費については概ねまかなうことができます。従って、リタイアから70歳になるまでの生活費と、それ以外の大きな支出に備えた額の合計が、用意すべき老後資金の額であり、このうち会社から支給される退職金を差し引いた残りが、自分で積み立てておくべき老後資金だと考えておけばよいでしょう。

人気の記事

あわせて読みたい