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日本の年金制度は破綻している?

向井 洋平
IICパートナーズ 常務取締役
年金数理人
1級DCプランナー
2017年10月02日

日本の公的年金制度に対する国民の信頼は決して高いとは言えません。特に若い世代では、自分は年金はもらえないと思っている人も多いようです。これは年金不信を増大させるような報道を繰り返してきたメディアの影響も大きいでしょう。

しかし実際のところはどうなのでしょうか。

あまり大きなニュースにはなっていませんが、2017年3月末の年金積立金は過去最高の153兆円まで積み上がっています。年金制度の財政がどうなっているのか、基本的な知識を身につけ、不安をあおるような報道に惑わされることなく、老後のマネープランを立てていきましょう。

年金の支払いはどこから賄われているのか

年金受給者への年金の支払いは、基本的には同時期に現役世代が負担している保険料によって賄われています。これを賦課(ふか)方式といいます。

しかし日本では少子高齢化が急速に進んでいるため、単純な賦課方式のもとで収支をバランスさせようとすると、短期間のうちに年金支給額の減少(または年金支給開始の延長)や保険料負担額の増加を進めなければならず、日常生活や経済活動に大きな影響が出てしまいます。

そこで、日本の公的年金制度では、保険料のほかに2つの財源を用意しています。
1つは税金であり、公的年金のうち、全国民に共通の国民年金(基礎年金)の半分は消費税によって賄われています。つまり、年齢にかかわらず、購買力に応じて全国民が広く財源を負担することで年金制度を支えています。

もう1つは積立金です。人口の高齢化が進んでいくことはあらかじめ予想できるため、これを見越して保険料を積み立てておき、その運用収益によって財源の一部を確保するとともに、さらに高齢化が進んだ局面では積立金を取り崩していくことによって、年金の支払いを賄うこととしています。

実際の年金制度の収支はどうなっているのか

厚生労働省から公表された「厚生年金・国民年金の平成28 年度(2016年度)収支決算の概要」によると、厚生年金と国民年金を合わせた歳入額の合計は53.2兆円、このうち積立金の取崩し額は0.4兆円程度であり、実質的な収入額は52.8兆円程度となっています。
※「積立金より受け入れ」と「年金積立金管理運用独立行政法人納付金」の合計

これに対して歳出額の合計は50.0兆円ですので、差し引き2.8兆円が実質的な黒字であり、これが積立金に充当されたことになります。

さらに2016年度は積立金の運用収益が7.9兆円あったことから、積立金の残高は2015年度末の142.7兆円から153.4兆円に10.7兆円増加しています。

日本の人口はすでに減少に転じ、少子高齢化はかなり進みつつありますが、それでもなお年金制度の収支は黒字であり、さらに約3年分の「貯金」がある状態にあります。これだけ見ても、年金制度が破綻とは程遠い状況にあることが分かるかと思います。

積立金が底をつくことはないのか

しかしそれでも若い人の中には、自分が年金をもらう頃には積立金が底をついているのではないかと思う人もいるかもしれません。2014年度に実施された財政検証では、いくつかの前提条件をおいて将来の積立金のシミュレーションを実施しており、悲観的なケースでは2050年代に国民年金の積立金が底をつくという結果になっています。

しかし、よりボリュームの大きい厚生年金については、どのケースで見ても今後2110年度まで積立金が底をつくことはないという結果になっていますから、公的年金全体の積立金が生きている間に底をつく可能性は低いと考えてよいでしょう。

また、仮に積立金が底をついたとしても、保険料と税金による収入分については年金を支給することができますから、日本から現役世代が消えてしまわない限りは、年金が完全になくなることはありません。

公的年金は、それだけで余裕のある老後を過ごせるだけの十分な額が確保されているわけではありませんが、将来にわたって国民にとっての老後の収入の柱となることは間違いありません。現行の公的年金制度の仕組みのもとで、自分の年金がいつから、いくら支給されるのかを把握することが、老後のマネープランを立てる上での第一歩です。

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